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1.312025
死後事務委任契約書と遺言書。何が違うのか?
目次
死後事務委任という言葉を聞いたことがありますか?
「遺言書」という言葉は、はっきりとした意味はわからなくても聞いたことありますよね?
「自分が死ぬ前に遺しておくものだよね?」と聞かれれば「そのとおりです。」とお答えします。
なので自分が死んだ後のことを書いておくものだろうな、という想像はつきます。
では「死後事務」という言葉から連想されることは?
やはり自分が死んだ後のことだよね、いろんな手続とか。
「死後事務委任」ということは自分の死んだあとの手続きを誰かにおまかせしておくことだよね?
そのとおりです。
「じゃあ自分の死んだ後のことは、遺言書を残しておけば安心だよね?」と聞かれると不正解です。
死後事務委任契約と遺言書の違い
遺言書は、自分の財産を誰にあげるか書いておくものです。
法的効力を持つのは「財産」のみです。
他には子の認知や相続人の廃除など、身分関係についても書くことができます。
「自分のお葬式は○○で行ってほしい」と遺言書に書いたとしても、それは絶対守らなければならないものではありません。
ただの希望を書いただけで、手紙やエンディングノートに書くのと同じようなものです。
そこを補ってくれるのが死後事務委任契約書です。
自分の死後の事務手続きをお願いする人とそれを受任する人との間で契約を結びます。
遺言書のように法律で要件が決まっているものではありませんが、公正証書で作成する方が安心です。
公正証書は公証役場というところで公証人がいる中で作成されます。
当事者だけではなく法律の専門家である公証人が入ることによって、より確かな契約書になります。
死後事務と一言で言っても…
ご家族が亡くなったご経験がある方はお分かりになると思います。
しかし亡くなってから悲しむ間もなくいろんなことに追われ、言われるがままにやって記憶に残っていないかもしれません。
- 死亡診断書または死体検案書の受取り
- 役所へ死亡届の提出
- 病院・介護施設等の退院・退所手続きと精算
- 葬儀や火葬に関する手続き
- 埋葬や散骨等に関する手続き
- 菩提寺選定、墓石建立に関する事務
- 永代供養に関する事務
- 住居賃貸料の支払い・解約手続き
- 住居の引き渡しまでの管理
- 遺品整理
- 健康保険や年金の手続き
- 車両の廃車または売却などの手続き
- 運転免許証、パスポートの返却
- 公共料金の支払い停止
- 住民税などの納税手続き
- インターネットの解約
- クレジットカードの解約
など
死後事務と呼ばれるものにはこのようなものがあります。
人によってはもっと少ないかもしれませんが、それでも1、2、4、5あたりは日本で死ぬとなったら必ず行わなければいけない手続きです。
誰もいなくても、役所がやってくれるでしょ?
亡くなったあと誰もこれらの手続きをやる人がいない場合、役所がやってくれるのは火葬を行い寺院の合葬墓などへの納骨までです。
これは墓地埋葬法第9条が根拠となります。
死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
逆に言うとそれ以外は誰も何もやってくれません。
賃貸物件に住んでいた場合は、大家さんや管理会社に大迷惑がかかってしまいます。
子供たちが遠方にいて同居していない高齢者。
このような状況で亡くなった場合、家族の連絡先がすぐにわからないケースもあります。
自治体は戸籍などをたどって家族を探そうとしますが、時間と人手がかかるそうです。
遺体を長く安置していることもできないので家族に連絡が取れる前に火葬をしていまい、連絡がつくころにはすでに遺骨になっている。
こういうケースが最近増えているそうです。
子供たちはちゃんとしたお別れができないまま、突然遺骨となった親と対面することになります。
どこにやるせなさをぶつければいいのでしょうか。
こういった事態を避けるために、冷蔵庫などの目立つところにいざというときの連絡先を大きく書いて貼っておくことがよいそうです。
緊急時にすぐに連絡ができるように。
死後事務委任が増えている背景とは
サザエさん家族のように三世代がひとつ屋根の下、という時代は今や珍しくなっています。
1人暮らしのいわゆる「おひとりさま」の増加がその背景だと言われます。
おひとりさまは何も天涯孤独というだけではありません。
子供が遠方にいるけれど一緒に住んでいない。
子供がおらず夫婦だけで、片方が先に亡くなってしまった。
結果的に独居(おひとりさま)になってしまう人が多いということです。
私の身近でも
やはり一人暮らしの高齢の知り合いがいます。
私が昔とてもお世話になった方です。
独身なのでどこまで頼れる人がいるのかはっきりわかりません。
でも不安だろうなと思います。
私に助けを求めてくれるのであれば、いろんな手段を講ずることができます。
しかしそんな声もかからないのに「死後事務委任契約を結んだ方がいいよ、遺言書は書いた?」なんて言えません。
おそらくこのような環境におられる人は、今の日本にたくさんいると思います。
そういった人と巡り合って不安を軽くするお手伝いができればいいと、常々超高齢化社会を憂えています。