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帰来時弁済(きらいじべんさい)型の遺産分割

帰来時弁済型遺産分割

相続が開始して遺言書がなければ、相続人たちは「全員で」遺産分割協議をしなければなりません。
参照:相続人とは誰なのか

 

さて、相続人の中に生死不明や行方不明の人がいて相続人が全員揃わない場合、いつまでたっても遺産分割協議はできません。

 

「相続人の中に行方不明者がいる場合なんてあるの?」と思われたかもしれませんが、あるのです。
例えば、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になる場合があります。
今の団塊の世代以上は、兄弟が多かった時代です。
兄弟でも一番上と一番下ではかなりの年齢差があったりします。
そうなるとその中に生きてるか死んでいるかわからない、または生きてるだろうけどどこにいるかわからないというケースが出てくるのです。

 

相続人がそろわなければ、遺産分割協議はできません。
その場合どうするのでしょうか?

 

失踪(しっそう)宣告

失踪宣告

雑に言うと、行方不明になっている人を死亡したことにするのです。

例えば、夫がふらっといなくなってもう数年。
夫が生きている限り、妻は「婚姻中」ですから、他の人と結婚をすることができません。
夫が行方不明なので離婚をすることもできません。
また、生存中である可能性があるので夫の生命保険を受け取ることもできません。

そんなとき、妻が夫の失踪宣告を請求することによって、夫は死亡したことになるのです。

 

民法30条

1.不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失の宣告をすることができる。

2.戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争がんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

行方不明の相続人が失踪宣告によって死亡したとなると、相続人が確定しますので、遺産分割協議を行うことができます。

 

 

不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人

行方不明になったけど7年もたっていないなど、失踪宣告ではない方法をとる場合にこちらの制度をつかって遺産分割協議をします。
不在者財産管理人とは、その名の通り不在者の財産を管理する者で、家庭裁判所に申し立てることにより選任されます。

この制度の「不在者」とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者とされています。

 

この不在者財産管理人を選任して、不在者の代わりに遺産分割協議に加わってもらうのです。
ただし、遺産分割協議への参加はその権限の範囲を超えているため「権限外行為許可」を家庭裁判所に申立て、許可を得る必要がありますが。

そして、基本的に不在者の法定相続分を下回る遺産分割協議は認められないことに注意が必要です。

 

不在者財産管理人の職務は、

  • 不在者の財産がなくなる
  • 不在者が死亡する又は失踪宣告がなされる
  • 所在が確認される

このいずれかの時点まで続きます。

遺産分割協議が終わったから、「お役目ごくろうさま」とはなりません。
分割した相続分を管理する義務が続くわけです。

不在者財産管理人には報酬を支払う場合もあります。
ずっとその報酬が発生し続けるってこと?

 

 

帰来時弁済(きらいじべんさい)型の遺産分割

帰来時弁済型遺産分割協議

「帰来時」とは不在者が「帰ってきたときに」という意味です。

 

不在者財産管理人を交えて遺産分割を行っても、相続分がある限り、不在者財産管理人は必要です。
となると、不在者財産管理人への報酬も発生し続けるし、不在者財産管理人は定期的に裁判所へ報告し続けなければなりません。

 

それを解消するのがこの帰来時弁済型の遺産分割です。

  • 帰来の可能性が低い
  • 不在者に子がいない
  • 相続財産が高額でない

という条件下ではありますが、不在者の相続分を他の相続人が預かっておく、という遺産分割の方法です。
そして不在者が帰ってきたとき(帰来時)にその預かっていた相続分を渡すということです。

 

実際の遺産分割協議書には、財産を全て他の相続人間で分配した上で、以下のような一文を追加します。

 

相続人 ○○ は、不在者 ○○ が帰来し、同人から請求があったときは、同人に対し、 金○○円 を支払う。

 

 

不在者財産管理人に相続分を管理させるのではなく、他の相続人が管理する、という形です。
この一文を追加することで、遺産分割協議が成立した時点で不在者の財産はなくなり、不在者財産管理人の管理業務は終了します。

 

ちなみに、この帰来時遺産分割協議には家庭裁判所の許可が必要です。
また、その分を支払える資力を証明する必要もあります。

 

不在者財産管理人への報酬

不在者財産管理人の報酬

不在者財産管理人は、利害関係のない人であれば資格はいりません。
しかし不在者の財産を管理するために選ばれるものなので、職務を適切に行えることが必要です。
ですので、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

その時の報酬ですが、不在者の財産から支払われることになります。
相場では1~6万円くらいの間となっているようですが、
なかなかなお値段になりますね。

不在者が帰ってきて、自分の財産が少なくなっていることを知ったら「誰も頼んでないのに!」ってトラブルになるかもしれません。

 

 

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