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10.272026
危急時遺言の確認審判と検認とは?20日以内の申立てと悪用リスク【後編】

前回の続きです。
証人の署名捺印が終わったからそれで終わりかと思いきや、まだここから大事な手続きがあるのです。
特別な方式の遺言書ならではかもしれません。
確認審判の申立て
遺言の日の翌日から起算して20日以内に確認審判を家庭裁判所に申し立てます。
遺言が遺言者の真意に出たかを家庭裁判所が確認の審判をするものです。
証人のうちの1人、または利害関係人が申立人となります。
手数料は遺言書1通につき800円、それと郵送代がかかります。
申立てをすると、調査官による事情聴取(調査)が行われます。
聞かれる内容は遺言書の内容だけではありません。
遺言書を作成する背景や当時の様子など、細かく調査されます。
遺言者が存命であれば、本人にも直接確認されることもあるようです。
遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ確認を請求し、その確認を得なければこの遺言は効力を生じません。
確認は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの一応の心証が得られれば足りるとされています。
ここでは遺言者の真意に出た遺言書であるかどうかを確認されるだけで、遺言書の有効無効、遺言能力があるかどうかは争いの余地はあります。
検認の必要性
自宅などで保管している自筆証書遺言もそうですが、遺言執行(相続手続き)をするには検認という手続きが必要になります。
相続開始後(遺言者の死亡後)、こちらも家庭裁判所に申し立てます。
検認の役目は、相続人全員に遺言書があることと、その内容を知らせること。
また日付や署名、文字の修正箇所などを記録し、後から偽造・変造されるのを防ぐためのものです。
ここでもやはり有効の太鼓判を押すわけではありません。
検認が終わっているから「有効」と言い切れるわけではありません。
この手続きを経て遺言執行を行うことができます。
そのためには遺言書に検認済証明書の添付が必要なのです。
有効無効の判断
確認審判でも検認でも有効無効を判断するものではない、と書きました。
基本的には有効な遺言書だと信じて手続きを進めるわけです。
しかし、遺言内容に納得がいかなかった相続人の一人が、「遺言者は死ぬ間際で意識が混濁していたから遺言能力はなかった!」と主張するかもしれません。
だから遺言書は無効で、法定相続分で分割すべきだと。
そうなると訴訟などで争われることになります。
ここで有効か無効かが判断されるわけです。
この争いがなければ、検認が終わった時点で遺言書を使って相続手続きができます。
簡単に作成できてしまう遺言方式だからこそ

危急時遺言は三匹のこぶたのわらの家のように、比較的簡単に作られてしまう遺言書です。
ですから悪用される可能性があります。
例えば、公正証書遺言を作成している人がいたとしましょう。
民法第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
あとから作成された危急時遺言が成立すれば、内容が抵触する部分については危急時遺言の方が優先されます。
極端な例ですが、先の公正証書遺言で長男にすべての遺産を相続させる内容を残していたとします。
悪意を持った二男が、危急時遺言としてすべての遺産を自分に相続させる内容で作成させることも可能ではあるのです。
遺言者本人の署名捺印が不要な遺言方式です。
悪意をもった者が作らせやすい制度でもあるわけです。
遺言者は病の中で精神的に不安定、そんな弱い部分を突いて二男が、事情を知らない知人や自分の言いなりになる第三者3人を証人として集めて危急時遺言を作成させる。
それによって先の公正証書遺言はくつがえるおそれがあるのです。
一概には言えないのだけれど

先ほどの長男と二男の話は極端な例です。
すべてを長男に相続させる遺言を残した親は、二男にさんざん迷惑をかけられてきたのでそんな極端な遺言書を残したのかもしれません。
しかし長男至上主義という偏った考えをもっていて、現代の考え方にそぐわない見地からそのような遺言書にしたのかもしれません。
親は平等にしているつもりでも、子どもからしたら不公平に感じることもあります。
親の心子知らずと言いますが、逆もありえます。
誰にとっても平等であることは難しいですが、理不尽な(今では長男至上主義はその一部な気もします)遺言書は望まぬ争いを生む可能性をはらんでいます。
他人だったら許せることでも、家族だから許せないこと、腹が立つことってあると思います。
そして切っても切れない関係なのも家族。
今は父親が絶対的、長男が絶対的という時代ではないため、遺言内容に不満をもらす相続人もいます。
それが「争続」に発展していきます。
そういった骨肉の争いを少しでも減らせるお手伝いが自分にできればと切に願います。




