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10.252026
危急時遺言とは?証人3人・口授など作成の要件をわかりやすく解説【前編】

遺言書(ゆいごんしょ・いごんしょ)
高齢化に伴い、遺言書は身近になり、遺言書自体をご存じの方は多いでしょう。
遺言書の役目を、正確ではなくてもなんとなくご存じの方は多いのではないでしょうか。
中には自筆証書遺言、公正証書遺言などの種類をご存じの方、そして実際作成されている方もいらっしゃることでしょう。
そんな方でも、危急時遺言という遺言書の方式はご存じではないかもしれません。
以前デジタル遺言にも触れましたが、やはりこれとも違います。
自筆証書遺言、公正証書遺言、デジタル遺言ともまた違った遺言書をご紹介したいと思います。
なお、2026年6月に民法が改正され、押印が不要になるほか、録音・録画を用いて証人1人以上で作成できる危急時遺言の方式が新設されます。
ただし未施行で、現時点では本記事の方式によります。
遺言書の普通方式・特別方式
普通の方式の遺言として、以下の3つがあります。(民法第967条~第972条)
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
これ以外の特別の方式として以下の遺言書があります。(民法第976条~第979条)
- 死亡の危急に迫った者の遺言
- 伝染病隔離者の遺言
- 在船者の遺言
- 船舶遭難者の遺言
このうちの「死亡の危急に迫った者の遺言」を俗に危急時遺言と呼んでいます。
他の特別な方式の遺言をご覧になってもわかる通り、特殊な状況に置かれた人が作成する遺言書の方式です。
危急時遺言と他の遺言書の違いをイメージで例えると

「三匹のこぶた」という童話をご存じでしょうか?
悪いオオカミから身を守るため、こぶた3兄弟がそれぞれに家を作ります。
長男(いちばんうえ): わらの家をすぐに作りました。
二男(にばんめ): 木の家を簡単に作りました。
三男(おとうと): 時間と手間をかけて、丈夫なれんがの家を作りました。
自筆証書遺言は、手軽に自分の手で書くことによって作成できます。
ただしちゃんとした知識がないと、もしかすると相続開始となった際に遺言書としての機能を果たさない、もしくは争いの種になる可能性も含んでいます。
例えるならこぶたの二男が作った、簡単に作れる木の家でしょうか。
公正証書遺言は、公証役場というところの公証人が作成してくれます。
専門家として、抜け目ないしっかりした遺言書を作成してくれますが、打ち合わせや必要書類の提出、なによりも数万円単位の費用がかかります。
例えるならこぶたの三男が作った、丈夫なれんがの家ですね。
危急時遺言はもうご想像できるかと思いますが、こぶたの長男が作ったすぐに作れるわらの家です。
理想はれんがの家だけれども、ないよりはましのわらの家、そんな位置づけなのが危急時遺言です。
危急時遺言とは
できればしっかりした家を建てた方がいい、でもなにもないよりはマシな危急時遺言。
民法第976条
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。
死亡の危急に迫った者
「死亡の危急に迫った者」という判断は主観的でよいと解されています。
医学的見解や診断書は不要です。
余命宣告がなくても、老衰やけがでも自分が「危急に迫った」と感じるときがそのタイミング。
結果的に危急でなかったとしても、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月生存すれば、危急時遺言は効力を失います。
証人三人以上
公証人は不要です。
証人が3名以上立ち会えればいいのです。
時間や場所の制約を受けないので、病院に証人3名が駆けつけて真夜中に作成するということも可能です。
証人は士業でなくてもかまいません。
ですが、証人になれない人もいます。
民法第974条
次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
遺言者が亡くなったときに相続人となるはずの人、遺言で財産を受け取る人(受遺者)、そしてその配偶者や子・親などの直系血族は証人になれません。
遺言の趣旨を口授(くじゅ)して
口授とは直接口頭で言葉を発して伝えることです。
「死亡の危急に迫った者」が遺言者なので、あまり複雑な遺言内容にはできないでしょうし、すべきでもありません。
シンプルにしぼることが、トラブル防止につながります。
元々公正証書遺言を作成するつもりで準備をしていたが、それが間に合わず危急時遺言になった場合などは、遺言内容がそこまで大きく違うことはないでしょう。

そしてその口授を受けた者が、内容を筆記して、遺言者と他の証人の両方に読み聞かせるか閲覧させます。
各証人がその筆記の正確なことを承認した後、署名し印を押さなければなりません。
遺言者本人の署名捺印はいりません。
危急時遺言の場合は、証人全員の署名捺印が重要になってきます。
当然ですが、遺言者が口授の途中で意識がなくなったり死亡した場合や内容の確認が間に合わなかった場合は、この遺言書は成立しません。
なので詳細な遺言書を作成するより、とにかく急ぐことが大事です。
次回は事後の手続きをご紹介します。
危急時遺言はこれで終わりではないのです。




