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12.262022
契約書作成にまつわる、記名署名、押印捺印、契印割印の違いとは?

目次
契約書がないと、その契約は有効ではないのでしょうか。
口約束だけでは、契約を結んだことにはならない?
中には、契約書の作成が契約の成立要件になっていたり、契約書の作成が義務付けられている契約もあります。
ですが、それ以外のほとんどの契約は、契約書作成を必要としません。
わかりやすい例が、こちら。
スーパーで品物を買うのに、わざわざ売買契約書を作成したりしませんよね。
友達からちょっと漫画を借りるのに、使用貸借契約書を作成しませんよね。
それでも、「売買契約」や「使用貸借契約」は成立しています。
では契約書を作成する場合とは。
紛争を予防するためです。
数百円や数千円くらいが動く契約であれば、紛争は起こりづらいです。
しかし、すぐに支払いができないような数百万円以上が動く契約では、多くの問題が出てくる可能性があります。
「780万円で車を売買する」と口約束をした場合。
780万円は消費税込み?
いつ支払い?
車の引き渡しはいつどこで?
それにかかる費用はどうするの?
そもそも買ったことを否定されたら?
もめ事が起こりそうな小さな決め事を、お互いが忘れないための契約書です。
今回は、契約書作成自体のブログではありません。
それにまつわる、ちょっとした知識のお話です。
「記名」と「署名」
どちらも、自分が手書きで名前を書くことかと思いがちですが。
「署名」は署名者が自分で書く、自署することを言います。
「記名」は「名前が記されていること」です。
署名者以外の記載や、タイプ入力、ゴム印のことを指します。
記名の場合は押印されていないと証明力がありません。
なので「記名押印または署名」と書かれているのを見ることがあると思います。
コロナが流行して以降、署名していれば捺印が不要な書類も増えました。
「押印」と「捺印」
元々は、「記名押印」「署名捺印」が省略された言葉です。
どちらもハンコを押すことですね。
では、なにが違うのか。
「押印」は前述の「記名」されたところにハンコを押すことです。
または記名のないところにハンコを押すことを言います。
「捺印」は自署したところにハンコを押すことです。
感覚的にもおわかりかと思いますが、「記名押印」より「署名捺印」の方が証明力が上です。
印鑑証明書が必要とされるような契約には、「署名捺印」が求められることが多いです。
「記名捺印」、「署名押印」という言葉はおかしいということになりますね。
収入印紙って必要なの?
昔は、切手と何が違うのか?と思っていました。
こちらは税金になります。
契約書が印紙税法上の課税文書にあたる場合には、貼る必要があります。
以下、国税庁のサイトから用いています。
課税文書に該当するかどうかは、契約書の名称ではなく、契約書の記載内容から実質的にどうかという観点で決まります。
なので「不動産売買契約書」という名称でなくても、実質的に不動産の売買に関する契約書であるなら、印紙は貼らなければいけないということです。
貼っていなくても、契約書の効力がなくなるわけではありません。
課税文書に貼っていない場合は、脱税になってしまいます。
また、契約書の原本のみに必要で、写しには不要です。
収入印紙はただ貼るだけではなく、以下の図のように、当事者の押印を印紙にまたがるようにする消印が必要です。
印紙代はどちらがもつの?
売買契約の場合、印紙代は売主、買主のどちらが負担するのでしょうか?
不動産の売買契約書では、印紙代もバカになりません。
民法にはこのような条文があります。
(売買契約に関する費用)
第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
売買契約の場合、印紙代は売買契約に関する費用と解されますので、売主と買主で折半になります。
電子契約書の場合
印紙税法には以下の条文があります。
(課税物件)
第2条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
「文書」ということばに注目です。
電子契約書はここでいう「文書」にはあたりません。
ですので、電子契約の場合には、この印紙税は課税されないと解されています。
電子契約書については、こちらでもブログを書いてます。
「契印」と「割印」
2枚の紙にまたがって押印する、という点は共通です。
契印
「契印」は、契約書が複数枚にわたっているときに一体性、連続性を示すために必要となります。
製本テープを使用しない場合
まず、複数ページになっている契約書をホチキスで止めます。
その際、ページの見開きごとに、当事者全員が押印をします。
製本テープを使用する場合
ホチキスで止めた後、製本テープで背表紙を作ります。
その製本テープと契約書の紙の部分にまたがるように、当事者全員が押印をします。
(表表紙と裏表紙それぞれに)
見開きごとの押印は不要になります。
製本テープを使う、使わないどちらの場合の押印にも、署名捺印で使用したものと同じ印鑑である必要があります。
割印
こちらは整合性、関連性を示すための押印です。
収入印紙が高額になる場合は、契約書の原本のみに印紙を貼り、その写しを作成するという方法をとります。
その原本と写しが、同じもの、関連があるものですよ、と示すために押印するものです。
こちらは契印と違って、署名捺印と同じ印鑑でなくてもかまいません。
まとめ
言葉としては知っていても、意味を区別して使っていない場合があるのではないでしょうか?
契約書ひとつとっても、こんなにいろんな要素が詰まっているのです。
今後契約書を交わす際には、このようなこともちょっと思い出してみてくださいね。