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4.72024
「任意後見人制度で分かったリアル~良い機会になりました編~」後編
こちらの続きです。
父と子、母と子がそれぞれ財産管理委任契約と任意後見契約を公正証書で作成するお話しの続きです。
依頼者はお子さんです。
公証役場での流れ
依頼者のお父様が足がお悪いと伺っていたので、グーグルマップで公証役場の建物の写真を確認しておきました。
案の定、階段がある。
それも事前に公証役場に伝えておいたので、当日は電話をもらえればスタッフが昇降機を操作しに来てくれるとのことでした。
今回はお父様はご自身で階段を上がられたのでそれは不要になりました。
公証役場の中って、私が知る限りでは結構狭いところが多い気がします。
なので車いすで利用するとなると、わりと不便かもしれません。
もちろん、それしか手段がなければ他に代えることはできませんが、今回は車いすでなく手押し車で来ていただいたのでよかったです。
さて、約束の時間に公証役場に行ったのですが、かなり待たされました。
父と子、母と子という2つの契約でしたが、内容も同じということで同時に1部屋に入っての流れとなりました。
私も同席です。
公証人との名刺交換など一通りの挨拶が終わって、いよいよ本題に入ります。
とはいえ、できあがった公正証書を読み上げていくだけです。
公証人は条文ごとにわかりやすく説明を入れてくださいました。
しかし、任意後見契約はかなりの枚数になるため、読み合わせるのに時間もかかります。
当たり前ですが、最初から最後まで一字一句読み合わせて説明していきます。
公正証書は和紙のような紙で薄っぺらいため、かなりめくりづらいです。
後ろの方のページにある代理権目録を途中で読んだりするので、ページがあっちこっち飛ぶのですが、めくりづらいことめくりづらいこと。
そしてページ数も振られていないので、読んでいるところが迷子になりがちです。
私はご両親の後ろにスタンバってページめくり係をやっていました。
あと、トイレについても気を付けてあげたいところです。
足がお悪いとか雰囲気とかで、ご高齢の方は途中でトイレに行きたいと言いづらいかもしれません。
今回はご本人が「トイレに行きたい」とおっしゃってくださったのでよかったですが、そういった配慮もした方がいいかと思います。
そんなこんなでたっぷり1時間ほどかけて手続きが終了しました。
最後はご本人たちが署名し、実印を押して終わりです。
依頼者が「これは伝えたい!」と思ったこと
実は今回の案件は、ブログにするつもりはありませんでした。
ですが「ユーザーの気持ち的にはこんな感じ」ということで多くの人に知ってもらえたらと依頼者からのご提案でした。
前編にも書きましたが、この記事の題名は依頼者であるお子さんのお言葉です。
実印のお話しです。
今回の任意後見契約公正証書を作成するにあたり、実印が必要でした。
今まではご両親がご自身で管理なさっていたのですが、その管理がしっかりできていなかったことが判明。
最近では印鑑レスの手続きも増えましたが、両親世代はまだまだ印鑑が重要な時代。
持っている数も多いでしょうし、印鑑って不要になっても捨てづらいですよね。
その結果、実印がどれかわからなくなる又は行方不明になってしまう。
ご両親がご自身で管理ができていないということ、それがわかっただけでも大きな収穫だったと。
ということは、他にも管理できていないものがあるはずということになり、これを機会に家の権利書や重要書類もお子さんが把握、管理することになりました。
こういうきっかけでもないと、重要書類を預かるなんて機会はなかったと思うので、非常に助かったとのことでした。
今回のご依頼をとおして私が感じたこと
依頼者の「伝えたいこと」は私も同感でした。
さらによかったと思ったのは、公証役場に行く前の打ち合わせ場所のスタバに、ご両親だけが先に到着されたことです。
この親子は同居されています。
そうすると、ご両親はついついお子さんに頼りがちです。
お子さんも自分がやった方が早いので手助けする機会が増えます。
その結果、ご両親は自分で理解することを放棄し、お子さんに丸投げしてしまうくせがつきました。
ですが、スタバでお子さん不在だったご両親は、私の説明をご自身で理解されようと真摯に向き合ってくださいました。
理解するために、いくつか質問もしてくださいました。
ここに最初からお子さんがいらっしゃったら、ここまでしっかり聞こうという姿勢にならなかったかもしれません。
そしてこの機会がもう1ついい結果を生むことになりました。
「たくさんある財産をできるだけまとめて少なくした方がいいね」とご両親が理解してくださったのです。
任意後見契約が発効すると、受任者であるお子さんはやらなければならない事務作業がかなり増え、負担になります。
そういったこともご両親には理解していただき、銀行口座を減らしていくとか、無駄な保険を解約するとか、お子さんの負担を減らそうということに意識が向いたのだと思います。
「終活をしよう」というスタート地点に立たれたな、と感じました。
今回、1つの案件をとおしていろんなことに気づかされました。
ぜひご参考になさってください。