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遺言書を急いで作成したい。自筆証書遺言も公正証書遺言も作成している余裕がない。

危急遺言

遺言書って、意外と身近なものです

遺言書について、定期的にセミナーを行っております。

遺言書って、自分には関係ないかなと思っている人は多いかもしれません。

しかし、遺言書があることで、残された人がしなければならないことが減るケースが多いです。

 

遺言書がなければ、相続人と呼ばれる人たちに民法で決められた配分で相続されます。

遺言書は、それを覆すことができる本人が亡くなってからも守ってもらえる書き残し、と言ったところでしょうか。

人は亡くなってしまえば、意思表示はできなくなってしまいます。

例え自身の死後に「この財産だけは○○へあげたい」と考えていて、誰かにそれを頼んでいたとしてもその人が思い通りに行ってくれるかはわかりません。

強制力がありません。

 

その書き残しに、強制力を備えることができるのが遺言書です。

遺言書を残した人の意思が尊重され、残された人の好き勝手にできなくなるのです。

 

とはいえ、遺留分という遺言書で奪えない相続分もあるので、遺言書があれば好き勝手に財産をあげることができるわけではありませんが。

 

遺言書は、遺書、エンディングノートとは意味が違います。

法的効力をもつ、もたないの違いです。

法的効力をもつ遺言書は、そのとおりに相続しなければならないという拘束力をもつのです。

 

遺言書には種類があります

普通方式の遺言書

自筆証書遺言

財産目録以外は、すべて手書きで自分が書かなければいけません。

手が震えようが、みみずがはったような字であろうが、自身で書かなければ有効な遺言書にはなりません。

みみずがはったような字で書いて、開封した人たちが読めないようだと争いの火種になる可能性もあります。

しかし、思い立ったらいつでも作成できるのと、お金がほとんどかからないのはメリットと言えます。

 

公正証書遺言

地域に一カ所はある、公証役場というところで作成します。

どの財産を誰に相続したいかを伝えれば、公証人が作成してくれます。

自分で手書きする必要はありません。

しかし、1日や2日でできあがるわけではなく、公証役場の空きや打ち合わせの進捗により時間を要します。

また、数万円単位の手数料がかかります。

これがハードルを高くする一因かとは思いますが、自筆証書遺言と比べてメリットとなる点は、偽造紛失などの恐れがないことと、検認が不要であることです。

自筆証書は、自分で書き方を調べなければいけません。

決まりどおりに書かなければ有効になりません。

有効にならない遺言書を残してしまえば、争いの種を残すことになってしまうかもしれません。

 

私は、遺言書を残すのであれば公正証書遺言をお勧めします。

数万円かかったとしても、それだけの価値のある確かな遺言書であると思います。

 

これ以外の遺言書も存在します

特別方式の遺言書

 

生命の危機に瀕している人、その人が遺言書を残したいと考えるかもしれません。

例えば、闘病していていよいよ自分の死期を悟り、遺言書を作成したいと考えた。

自身で全文を書く、自筆証書遺言を作成する体力も気力もない。

とはいえ、公正証書の準備をしている時間もあるかわからない。

 

その場合、特別方式遺言というものがあるのです。

 

 

死亡の危急に迫った者の遺言

特別方式の遺言にはいくつかありますが、ここでは一般危急時遺言をご紹介します。

先ほどの例、死期が迫った人などが残すことのできる遺言の方式です。

民法の条文です。

第九百七十六条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。

 

証人が3名必要です。

その証人に口頭で遺言の趣旨を伝えます。

遺言書として書き残すのはその証人の役目になります。

 

証人になれる人とは?

第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

上記一から三の人はなれません。

ざっくり言うと、未成年と、相続で遺産をもらう可能性のある人は証人になれないということです。

ドクターやナースはいけそうですが、そもそもOKしてくれるかはわかりません。

 

そのあとの要件

まだまだ要件があります。

この遺言の日から20日以内に、家庭裁判所に確認を請求をしなければなりません。

その結果、家庭裁判所が遺言者の真意でないと判断した場合は有効となりません。

そして、自筆証書遺言と同じようにさらに検認が必要になります。

検認とは、、

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

裁判所より
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

 

おまけ要件

第九百八十三条 第九百七十六条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、その効力を生じない。

この方式の遺言をした後、元気になって自筆証書遺言や公正証書遺言が作成できるようになったときから6か月生存したときは、この遺言書は無効となってしまいます。

普通方式の遺言書が作成できるまで回復したのだから、特別方式を認めなくていいよね、ということです。

 

まとめ

普通方式として、自筆証書遺言と公正証書遺言というものがあります。

特別方式の一つに、危急時遺言の方法があります。

この遺言が有効になる要件は厳しく、以下の点に気を付けましょう。

  • 遺言者が死亡の危急に迫られていること
  • 証人3人の立会いが必要
  • 遺言者から聞き取った内容を書面にし、証人全員が署名捺印すること
  • 遺言の日から20日以内に、家庭裁判所に確認をしてもらうこと
  • 普通方式の遺言ができるようになったらこの遺言書の効力はなくなってしまうこと

普通方式でじっくり考えた遺言書を書いた方がいいと思います。

ですが、どうしてもという場合はこのような手段もあることを覚えておいてください。

 

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