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契約書作成にまつわる、記名署名、押印捺印、契印割印の違いとは?

契約書

契約書がないと、その契約は有効ではないのでしょうか。

口約束だけでは、契約を結んだことにはならない?

 

中には、契約書の作成が契約の成立要件になっていたり、契約書の作成が義務付けられている契約もあります。

ですが、それ以外のほとんどの契約は、契約書作成を必要としません。

 

わかりやすい例が、こちら。

スーパーで品物を買うのに、わざわざ売買契約書を作成したりしませんよね。

友達からちょっと漫画を借りるのに、使用貸借契約書を作成しませんよね。

それでも、「売買契約」や「使用貸借契約」は成立しています。

 

では契約書を作成する場合とは。

紛争を予防するためです。

 

数百円や数千円くらいが動く契約であれば、紛争は起こりづらいです。

しかし、すぐに支払いができないような数百万円以上が動く契約では、多くの問題が出てくる可能性があります。

 

「780万円で車を売買する」と口約束をした場合。

780万円は消費税込み?

いつ支払い?

車の引き渡しはいつどこで?

それにかかる費用はどうするの?

そもそも買ったことを否定されたら?

 

もめ事が起こりそうな小さな決め事を、お互いが忘れないための契約書です。

 

今回は、契約書作成自体のブログではありません。

それにまつわる、ちょっとした知識のお話です。

 

「記名」と「署名」

記名署名

どちらも、自分が手書きで名前を書くことかと思いがちですが。

「署名」は署名者が自分で書く、自署することを言います。

「記名」は「名前が記されていること」です。

署名者以外の記載や、タイプ入力、ゴム印のことを指します。

記名の場合は押印されていないと証明力がありません。

なので「記名押印または署名」と書かれているのを見ることがあると思います。

コロナが流行して以降、署名していれば捺印が不要な書類も増えました。

 

「押印」と「捺印」

押印捺印

元々は、「記名押印」「署名捺印」が省略された言葉です。

どちらもハンコを押すことですね。

では、なにが違うのか。

 

「押印」は前述の「記名」されたところにハンコを押すことです。

または記名のないところにハンコを押すことを言います。

「捺印」は自署したところにハンコを押すことです。

 

感覚的にもおわかりかと思いますが、「記名押印」より「署名捺印」の方が証明力が上です。

印鑑証明書が必要とされるような契約には、「署名捺印」が求められることが多いです。

 

「記名捺印」、「署名押印」という言葉はおかしいということになりますね。

 

収入印紙って必要なの?

収入印紙

昔は、切手と何が違うのか?と思っていました。

こちらは税金になります。

契約書が印紙税法上の課税文書にあたる場合には、貼る必要があります。

以下、国税庁のサイトから用いています。

印紙税額一覧表

 

課税文書に該当するかどうかは、契約書の名称ではなく、契約書の記載内容から実質的にどうかという観点で決まります。

なので「不動産売買契約書」という名称でなくても、実質的に不動産の売買に関する契約書であるなら、印紙は貼らなければいけないということです。

 

貼っていなくても、契約書の効力がなくなるわけではありません。

課税文書に貼っていない場合は、脱税になってしまいます。

また、契約書の原本のみに必要で、写しには不要です。

 

収入印紙はただ貼るだけではなく、以下の図のように、当事者の押印を印紙にまたがるようにする消印が必要です。

 

印紙代はどちらがもつの?

売買契約の場合、印紙代は売主、買主のどちらが負担するのでしょうか?

不動産の売買契約書では、印紙代もバカになりません。

 

民法にはこのような条文があります。

(売買契約に関する費用)

第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

売買契約の場合、印紙代は売買契約に関する費用と解されますので、売主と買主で折半になります。

 

 

電子契約書の場合

印紙税法には以下の条文があります。

(課税物件)

第2条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

「文書」ということばに注目です。

電子契約書はここでいう「文書」にはあたりません。

ですので、電子契約の場合には、この印紙税は課税されないと解されています。

電子契約書については、こちらでもブログを書いてます。

電子契約書とは?簡単に利用できるサービスの紹介。

 

「契印」と「割印」

2枚の紙にまたがって押印する、という点は共通です。

 

契印

「契印」は、契約書が複数枚にわたっているときに一体性、連続性を示すために必要となります。

製本テープを使用しない場合

まず、複数ページになっている契約書をホチキスで止めます。

その際、ページの見開きごとに、当事者全員が押印をします。

定款の写しの作成方法

 

 

製本テープを使用する場合

ホチキスで止めた後、製本テープで背表紙を作ります。

その製本テープと契約書の紙の部分にまたがるように、当事者全員が押印をします。

(表表紙と裏表紙それぞれに)

見開きごとの押印は不要になります。

製本テープ

 

製本テープを使う、使わないどちらの場合の押印にも、署名捺印で使用したものと同じ印鑑である必要があります。

 

割印

こちらは整合性、関連性を示すための押印です。

収入印紙が高額になる場合は、契約書の原本のみに印紙を貼り、その写しを作成するという方法をとります。

その原本と写しが、同じもの、関連があるものですよ、と示すために押印するものです。

割印

 

こちらは契印と違って、署名捺印と同じ印鑑でなくてもかまいません。

 

まとめ

言葉としては知っていても、意味を区別して使っていない場合があるのではないでしょうか?

契約書ひとつとっても、こんなにいろんな要素が詰まっているのです。

今後契約書を交わす際には、このようなこともちょっと思い出してみてくださいね。

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