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8.102022
山崎豊子さん著「女系家族」
「白い巨塔」や「華麗なる一族」などを執筆され、惜しくも2013年に亡くなられた、山崎豊子さんをご存じでしょうか。
H29年行政書士試験の、一般知識の問題では、
次の記述のうち、社会の様々な問題を題材に取り上げた小説家・山崎豊子の著作として、妥当なものはどれか。 -H29年行政書士試験 問題53より-
こんな問題も出題されています。
小説がテレビドラマ化されてもほとんど観ない私ですが、山崎豊子さんの作品は必ず観ます。
原作に忠実に作られているからです。
ドラマにも、山崎豊子さんのこだわりがみられます。
そんな山崎豊子さんの小説「女系家族」のドラマを、2021年12月に二夜連続テレビで観ることができました。
「女系家族」と書いて、「にょけいかぞく」と読みます。
このドラマを見た後、改めて小説を読みました。
かなり古い設定だなと感じましたが、それもそのはず、山崎豊子さんの1963年(昭和38年)の作品です。
もちろん民法も旧民法です。
被相続人である矢島嘉蔵の相続人は、妻がすでに他界しているため、藤代、千寿、雛子の3姉妹になります。
嫡出子である3姉妹の相続分に対し、お妾さんである浜田文乃が生んだ子供は非嫡出子として、1/2の相続分という設定になっています。
(現在では、どの子供の相続分も同額になっています)
嫡出子と非嫡出子の法定相続分
現行の民法ではこのように規定されていますが、
(法定相続分)第900条同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
嫡出子とは、婚姻関係にある男女の間に生まれた子ども、非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことをいいます。
このように改正された経緯は、憲法14条の定める「法の下の平等」に反するのではと長年論争されてきたことにありました。
最高裁はこの規定について「子供は婚外子かどうかを選ぶことはできず、それによって子供が差別されるようなことはあってはならない」として2013年9月4日に違憲判決がくだりました。
生まれてくる子供が、どこに生まれてくるのかは選べないでしょ、それによって、相続分が違うのはどうなの?という判断ですね。
妾とは
婚姻している夫が、妻とは別に世話をしている女性のことを指しますが、今の時代にはあまりいない存在なのでしょうか。
それとも、関東圏には少ないのでしょうか。
私は関西を出て25年ほどになりますが、他ではお妾さんうんぬんの話は聞いたことがありません。
私の出身は兵庫県で、両親も大阪府、兵庫県と生粋の関西人です。
母曰く、小さいころから周りには「2号さん」と呼ばれるお妾さんがいることは、珍しいことではなかったそうです。
本宅に子供がいて、お妾さんのところにも子供がいる、という状態です。
そのお妾さんの子が認知されているかどうかはそれぞれなようでした。
これは完全に母の考えではありますが、大阪にはサラリーマンではなく商人が多く比較的裕福であったため、男性が家族に内緒で自由にできる金銭も多く、お妾さんという存在が多かったのでは、と話していました。
この女系家族では、「妾の本宅伺い」とか、「妾の礼儀」など出てきます。
お妾さんが本宅に挨拶をしに行かなければいけない作法ってどうなのよ、どんな文化なのよ。
妾を作る男性の礼儀作法はどうなのよ、と今の感覚では思ってしまいます。
同じ関西弁でも
「女系家族」では、大阪船場を舞台にしているため、話し言葉はずっと関西弁です。
どういう発音をするかくらいはわかりますが、私が育った兵庫とも違う、また時代も違うため、あまり聞きなじみがないなまり方です。
物語の中では「お茶」を「おぶぅ」という読み方をさせています。
「こんなん聞いたことないわ!」と思って母に聞いてみたら、「知ってるで、私らは遣わへんけど、昔は年上の人が言うてたわ」という返事が返ってきました。
え、そうなん?!
また、「おおいとさん」「なかぁんさん」「こいさん」という呼び名で3姉妹は呼ばれています。
固有名詞ではなく、長女、次女、三女のことをこう呼ぶそうです。
谷崎潤一郎の細雪(ささめゆき)にも「こいさん」という呼び名は出てきます。
こちらも大阪市船場では昔から遣われていたようで、船場出身ではないですが、母は知っていました。
私は今でも関西が大好きです。
こういう、昔ながらの言葉を知らないまま、関西を出てきてしまいました。
こんな話を聞くと、どうしてもノスタルジックな気持ちになります。
今度帰省したときには、こんなコアな話を母に聞いてみようと思いました。