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9.272024
民法改正について、相隣関係の見直しがありました
ここ数年の間に、大幅な民法改正がなされています。
民法なんてあまり関係ないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、わりと身近だったりするんですよ。
近年、相続した土地の相続手続きを行わないでほったらかしておくなどの理由から所有者不明の土地が増加し、社会問題になっています。
そういった条文をメインに、解説していきたいと思います。
隣の土地を今までより簡単に使わせてもらえるようになった
第209条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
上記「一」「二」「三」の目的のために、必要最低限で隣の土地を使用することができるとされました。
ただし、人が住んでいる土地についてはそこの住人の承諾が必要です。
また、あらかじめその目的、日時、場所、方法を通知しなければいけません。
緊急を要する時などあらかじめ通知することが困難な場合は、使用を開始した後すぐに通知すればいいとされています。
今までと変わった点は、隣地を使用できることは権利とされたわけです。
以前は「使用することを請求することができる」とされていたため、拒絶された場合は訴訟を起こさなければならなかったのです。
権利と認められると同時に、必ず隣地使用者へ通知することをルールとしました。
公道から離れている土地の所有者がライフライン設備の設置をしたい場合
第213条の2 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
大きな土地を分割した場合に袋土地ができたりがけっぷちの土地など、公道から離れている土地の所有者が電気やガス管、上下水道等のライフラインを設置したい場合の取り決めが新設されました。
これにより、他の土地への損害が最も少ない設置・場所・方法で、設置設備権と設備使用権が認められることとなりました。
それと同時に事前に目的・場所・方法を所有者と使用者に通知しなければいけません。
使用することで発生するその土地の損害に対して、1年ごとに償金を支払います。
また、他人の設備を使用した時に受けた利益相当分の維持費用も負担することになります。
設置設備権と設備使用権という権利が認められた一方で、果たさなければならない義務も明文化されたわけです。
境界線を越えた根は切れたが枝は切ることができなかった
旧第233条では、隣の家の木の「枝」が自分の敷地にはみ出たときは、その木の所有者に枝を切らせることができ、隣の家の木の「根」が自分の敷地にはみ出たときはその木の根を切ってもよいという条文がありました。
(なぜ枝と根で取り扱いが違っていたのかナゾですが)
その条文がこのように改正されました。
第233条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
旧第233条では竹木の所有者が共有の場合、共有者全員の同意が必要でしたが、共有者の一人でも拒絶するか行方不明だった場合は切除できませんでした。
そして「枝を切ってね」と請求はできても自ら切ることはできず、無視されたら提訴するしかありませんでした。
それが「一」「二」「三」のときは、自ら枝を切ることができるようになったのです。
根っこについては変わらず切ることができます。
切ったことによりその木が枯れたらどうするんでしょうか、と考えるのですが。
例えば高価な松の木だったとか。
まだほかにも民法改定はありましたが、今回はここまでです。
共有関係の見直しもありました。
相続発生の場合も含め、共有状態になっている土地について共有者が行方不明の場合、変更・管理が容易にできず土地の利用に支障が生じる問題の解消のための改正でもあります。