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成年後見制度のお話~親が認知症になったら?後見業務とはなにをするの?~

成年後見制度

成年後見制度については以前にも記事を書きました。

成年後見制度とは。デメリットも知っておこう。

今回はそこから補足と深堀を。

 

 

成年後見、法定後見、任意後見はそれぞれ何?

後見制度に興味のある方は3つとも聞いたことがあるかと思います。

成年後見制度のしくみ

成年後見とは後見制度の総称で、その中身は「法定」か「任意」かに分かれます。

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方々の権利や財産を守り、後見人と呼ばれる代わりの人が意思決定を支援する仕組みです。

後見制度は「判断能力」が不十分な場合に使える制度であって、判断能力の衰えはなく、身体が不自由だからと使えるものではありません。

 

例えば、未成年者は成人するまで親権者である親が代わりに契約をします。

スマホを買う、バイクを買う、アパートを借りるなどはすべて親権者なしでは契約できません。

未成年は判断能力が不十分なので、本人の利益を保護するためです。

 

成年後見制度は、未成年ではなく成年になっているけれども、その本人の利益を守るために親権者のような人を決める制度です。

未成年のときの親権者の立場にあたる人が「後見人」と呼ばれる人です。

 

現在、ちまたでよく聞く「成年後見」は「法定後見」を指すことが多いです。

それだけ「任意後見」はまだ知られていないのです。

 

法定後見と任意後見の大きな違い

法定後見任意後見の違い

後見人に誰がなるかとそのタイミング

判断能力が衰える前か後かで選べる制度が違います。

 

判断能力が衰える前であれば、法定後見も任意後見も選べます。

判断能力が衰えた後では、法定後見しか選べません。

任意後見は無理です。

任意後見制度は後見人となる人と「契約」を結ぶことになります。

(公証役場で公正証書を作成する)

そのため、その時判断能力がしっかりしている状態である必要があります。

自分の信頼できる後見人を自分で選び、また支援してもらう内容も自分で決めることができます。

 

しかし、判断力が低下してしまってはその決断が自身でできません。

後見人となる人の都合のいいように契約してしまうかもしれません。

なので法定後見しか選べないのです。

 

法定後見人には、行政書士のほかに弁護士、司法書士など専門職の人が家庭裁判所によって選ばれます。

法定後見人は、絶対に専門職の人がなるというわけではなく、(親族などの)推薦する人がなれる場合もあります。

ケースバイケースです。

後見についてもらう人(被後見人という)の財産が多いまたは推定相続人が多い場合など、なんらかのトラブルにつながりそうなケースには専門職の人が選ばれる傾向にあるようです。

注意したいのは、推薦人が後見人にならなかったからと言って、後見制度の利用をやめるということはできません。

法定後見の場合「この後見人はイヤ!」という理由で取りやめることはできません。

 

任意後見の場合は後見人にプラスして任意後見監督人という人がつきます。

(法定後見の場合でも後見監督人がつく場合があります)

任意後見人を見張る人兼相談役です。

 

法定後見にせよ、任意後見にせよ、監督人や家庭裁判所への定期的な報告が必要なので、後見人の好き勝手に財産を管理することはできないようになっています。

 

任意後見人には取消権がない

被後見人が何十万もする羽毛布団を購入してしまったとします。

法定後見人であれば、この契約を取り消すことができますが、任意後見人ではこの契約を取り消すことはできません。

ここも大きな違いであると言えます。

 

後見人の業務

後見業務

後見人になったかどうかは、後見登記事項証明書に登記されることにより証明されます。

ただ、この後見登記事項証明書が手元にあればなんでも被後見人の代わりにできるというわけではありません。

実際、銀行手続においてはこの証明書をもって後見の届出を行います。

銀行ごとにこの後見届の手続きが必要で、手続き方法も異なりますので、できるだけ被後見人がもつ口座は減らしておくことがお勧めです。

年金事務所や行政関係も同じで、郵送物や連絡が後見人に届くように関係各所に届出や登録が必要です。

 

また、被後見人の居住用不動産を売却する場合です。

後見登記事項証明書を持っていたら、被後見人の代わりに契約がすぐにできるということはありません。

不動産屋に売買金額が相当であることを示す資料を用意してもらいます。

それをもって後見人は家庭裁判所に行き「居住用不動産処分許可の審判」を申立て、その許可が出たらやっと売買契約が結べるのです。

 

以上の銀行や役所手続きや不動産売買についてもそうですが「この後見登記事項証明書が目に入らぬかー!」と水戸黄門の印籠のように、見せればスムーズに事が運ぶというイメージではなく、そうなるための手続きができるようになるよ、という感じです。

なので、事務作業はいろいろと発生します。

後見人業務って大変なんですよ。

 

財産管理と身上保護が通常業務

財産管理はなんとなく想像できると思います。

お金や銀行口座の管理や支払いなど、というイメージです。

 

身上保護の一例としては、介護・福祉サービス契約、入退院手続き、施設入所契約やそれらの費用の支払いです。

混同されがちなのは、直接の介護や看護は業務に含まれないことです。

例えば、被後見人がけがをして食べるものを買いに行けない。

そのためのお金を出しヘルパーさんなどに依頼することは後見人の業務です。

しかし、後見人自身が食べ物を買いに行く、料理をするということは業務外になります。

 

気になる報酬について

後見人の報酬

任意後見人には契約により無報酬ということも可能です。

ですが、任意後見監督人や、専門職がなる法定後見人については家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払うことになります。

監督人や後見人が好き勝手に決められるものではありません。

ですが法律でいくら、ときっちり決められているわけでもありません。

参考までに裁判所の資料から参考額を抜粋してみました。

あくまで目安ですので、必ず以下の金額になるとはかぎりません。

管理財産が5,000万円以下 管理財産が5,000万円を超える
法定後見人

(任意後見人は契約により自由)

1万円~4万円程度/月 5万円~6万円程度/月
監督人 5,000円~2万円程度/月 2.5万円~3万円程度/月

 

法定後見人の業務が終了するときは、被後見人が死亡するときです。

なのでいったん法定後見制度を利用するとずっと報酬を払い続けることになります。

任意後見人については、任意後見監督人が選任されるまではいつでも解除できます。

(要は、被後見人の判断能力が低下して任意後見人としての業務が始まるまで。)

任意後見監督人が選任されたあとは、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得ることで解除できます。

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