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8.12022
遺言執行者、検認について勉強会で学んできました。
去る7/22に勉強会がありました。
その中で出た話を、また自分のノートのようにまとめていきます。
参考程度にご覧ください。
遺言執行者とは
(遺言執行者の権利義務)第1012条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、
相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
被相続人(亡くなった方)の遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
遺言執行者の選任方法と欠落事由
(遺言執行者の指定)第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、
又はその指定を第三者に委託することができる。
(遺言執行者の選任)第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、
家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(遺言執行者の欠格事由)第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない
遺言執行者は、遺言を作成する時点で指定しておくことができます。
遺言執行者には、相続人を指定することもできますが、未成年者(18歳未満)および破産者は、なれませんので注意です。
では、遺言執行者を遺言で指定するときに、17歳の人を指定することはできないのでしょうか?
指定されたときが17歳だったとしても、遺言執行者に就職するときに18歳に達していれば、問題がないそうです。
遺言者がまだまだお元気そうならば、17歳以下の人を遺言執行者として指定することはアリだと思いますが、今日明日にでも亡くなりそうな方が遺言執行者を17歳以下にしてしまうのは、指定する意味がないかもしれません。
遺言執行者の任務の開始
(遺言執行者の任務の開始)第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、
遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
トラブルが起こりそうだという点があります。
「遺言の内容を相続人に通知しなければならない」部分です。
その相続人に相続分がなかったとしても、遺言の内容を通知しないといけないということです。
遺言書がなければ、本来法定相続分があった相続人。
遺言書により、その相続分がなくなり、それを通知によって知る。
トラブルになりそうな気がしませんか?
しかも相続人であれば、遺留分がない兄弟姉妹にも通知が必要と解されます。
また、相続人だけではなく、一部の受遺者にも通知が必要です。
特定受遺者は、単なる譲渡を受けるだけですので通知の必要はありませんが、包括受遺者は、相続人と同じ権利義務を有すると規定されていることから、通知が必要であると解されています。
(民法990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。)
通知すべき内容
遺言執行者が相続人に通知すべき内容として、
・相続が発生し、遺言書が存在する旨
・通知された人が、相続人か受遺者であること
・遺言執行者に就任したこと
・遺言書の内容(遺言書の写しを添付する)
・遺言執行者の職務概要と、財産目録
検認について
(遺言書の検認)第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、
その検認を請求しなければならない。
遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)第1005条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、
又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
自筆証書遺言を保管、発見した者は、家庭裁判所に検認を申し立てなければなりません。
検認とは、相続人に対し、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
証拠保全にすぎず、遺言書の有効性を判断するものではありません。
遺言書発見から検認を終えるまでに、2~3カ月ほど要することもあります。
検認の詳細についてはこちらを。
また、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は、検認が必要ありません。
検認をしなければ、当然に隠匿とみなされるのか?
(相続人の欠格事由)第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
(中略)
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせることです。
遺言書発見者や保管者が、「検認を申し立てない」 =「 隠匿した」と当然に見なされるのでしょうか?
答えはNOです。
最高裁判例があります。(最高裁判所第三小法廷平成9年1月28日)
相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、
相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、
右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらないものと
解するのが相当である。
民法891条5号所定の相続欠格者にあたるためには、
①遺言書を故意に偽造、変造、破棄又は隠匿すること加え、
②自らが相続上有利な地位を得ようとする積極的な動機・目的
が必要であるという「二重の故意」の理論が採用されています。